融資を受けるための計画書の書き方

融資を受けるための計画書の書き方

飲食店を開業するにあたって、見込み年商の50%の額を調達する必要があります。その際、多くの方が日本政策金融公庫から融資を受ける形となりますが、外せないのが創業計画書や事業計画書の提出です。ここでは、各計画書を作成する上でのポイントや注意点を解説していきます。

 

◆日本政策金融公庫で融資を受けるときは創業計画書が必須

 

飲食店の開業に必要な資金は決して少ない額ではないため、自己資金や知人からの借用だけでは足りない場合、日本政策金融公庫からの融資が必要となります。しかし、開業したいと言えば誰でも無条件で認められる訳ではなく、融資を受けることの妥当性を自ら証明しなくてはなりません。融資を受ける者、つまり開業して店舗経営者となる者が、その熱意や返済能力の高さを出資者にアピールして融資を説得するための書類が、この創業計画書にあたります。大きな金額が動く融資の可否に関わる大事な書類であるため、心して作成するようにしましょう。

初めて創業・開業する方が創業計画書を書く上でのポイントは、これまでの経験や関連する実績、そして熱意をアピールすることです。たとえば誰かに大金を出資・融資する立場となった場合、誰もが出資先の実績が知りたくなることでしょう。これまでに店舗を運営したことがある方はその実績を記入することができますが、店舗を経営したことがない方はその分野の修行歴や就業歴を書くなどして少しでもその強い思いをアピールしましょう。この計画書のフォーマットは日本政策金融公庫のWebページから自由にダウンロードすることができるので、まずは記入すべき項目をチェックしてイメージを膨らませてください。

いくつかの記入すべき項目の中で、創業の動機や経営者の略歴はもちろんですが、必要な資金と調達方法や事業の見通しも重要となります。前者のふたつが「なぜ創業する必要があるのか」を示すものであるのに対し、後者のふたつは「確実に経営を継続し、さらに融資を返済する能力があるか」といった確実性を示すものとなるからです。どのようなところにお金が必要で、どこから調達してどう使うか、売り上げはどう立てて何年後にどんな成長を果たすかなど、より具体的にイメージできなければ、長期的な経営は不可能と判断されることでしょう。夢物語の数字ではなく、現実的な金額や計画でなおかつ客観的に見ても根拠を示すことができる数字を盛り込むようにしてください。

創業計画書を作成する上で参考になるのは、日本政策金融公庫から発行されている「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+」という冊子です。日本政策金融公庫は、過去の成功者のデータを分析して、創業に成功しやすい思考パターンを把握しています。この手引きの中には、創業動機の書き方はもちろん、さまざまな有益な情報が書き込まれているので、ぜひチェックしておきたいところです。

 

◆面談時に困らないためのポイント

 

日本政策金融公庫から融資を受けるためには、書類の作成・提出だけでなく面談を受ける必要があります。面談の時間は30〜90分とはいえ、創業計画書と同様に融資の可否を決める大事な項目なのでしっかりとした準備が必要です。「借入申込書」を作成して提出すると、面談時に持参するべき資料を明記された通知が届くので、面談の期日までに必要な書類を必ず揃えておいてください。

面談で担当者が知りたいことは、貸したお金を確実に返済できるか、という点です。確実な売上が返済には不可欠なので、売上高や収益について質問されることが多くなります。この日のために用意した資料を基に質疑応答がなされるため、きちんと売上計画を把握して答えられるようにしておくことと、その根拠や裏付けも説明できるようにしておきましょう。

ひとつ覚えておきたいのは、日本政策金融公庫は「お金を貸したい」ということです。融資業務がほとんどであるため、確実な返済能力がある者やきちんと儲けが発生するビジネスモデルを持つ者であれば、彼らにとっては上客となります。面談の担当者は金融公庫の上層部に対して許可を仰ぐ上で、いわゆる橋渡し役を担ってくれる強い味方です。しかし、開業が初めてで不安という方のために、面談には経営担当者や専門家の同席が許可されています。特に専門家の同席は落ち着いて面接に臨める上に、中小企業経営力強化資金という制度も利用することができるためおすすめです。

 

◆事業計画書を作成するときのコツ

 

日本政策金融公庫の面談を受ける際、創業計画書を含めた5つの事業計画書が必要です。事業の借入額の根拠やどのように返済を行っていくかを示すための書類であり、事業の概要や商品・サービスの説明、競合他社の調査や事業を始めた動機などの説明をしなければなりません。また、これらは融資の面談の際に必要なだけでなく、今後経営をしていく本人が経営上のリスクを把握する意味でも重要な書類です。事業の概要や動機、商品の説明は創業計画書で行います。創業計画書の他に事業概況や売上高・人件費予測、損益計算書や資金繰り表といった4つの書類が必要であり、まずは事業概況の書き方から見ていきましょう。

事業概況は、開業準備の初期段階で準備する「コンセプトシート」を基に作成します。立地や家賃、営業時間などの他に、店舗規模やメニュー構成が主な内容です。ただ、これらは随時更新すべき内容であり、特にベンチマーク店と比較して高く感じた場合、メニュー構成や価格設定を調整する必要があるなど競合他社の調査は欠かせません。

次に売上高・人件費予測の書き方としては、アッパー(目標月商)とミドル(標準月商)、そしてボトム(最低月商)の3段階で見据えることがポイントです。考え方としては、月曜から水曜までと木曜から金曜まで、土曜・祝日といった区分で分けて、さらに客単価や客数、客席数と回転数から売り上げ金額を割り出して行く形になります。そこからさらにアッパーとミドル、ボトムの3段階の数字を用意していきましょう。データを細分化して根拠となる資料を別にまとめておくことにより、面談の時の説得力はもちろんのこと、経営を計画していく上での大きな指針となります。

 

◆損益の計画書を作成して収益の見通しを立てる

 

5つの事業計画書のひとつ、損益計算書は開業後の損益の見込みを計画した表であり、「損益計画表」とも言われます。開業後の事業の損益予測を立てることにより、数字の面で事業の有用性を示すことができる書類です。面談において必要な書類であるのは当然として、創業計画をより具体的にする上で欠かせない作業でもあります。

書き方のポイントとしては、経営環境や業界事情、設備能力や競合・価格の推移などを総合的に判断しながら月額の損益見込みを記入することです。まずは売上高から売上原価を差し引き、売上総利益を算出します。続いて人件費や家賃、減価償却費や支払い利息などの諸経費を算出してください。売上総利益から諸経費を差し引いたものが営業利益です。ここで、機械や備品など資産の目減りを表す減価償却費は、現金の支出がない経費ということを覚えておきましょう。さきほどの営業利益に減価償却費を足した金額が、月々に返済できる金額となります。

たとえば一ヶ月の売上高が250万円である場合、売上高の20%を売上原価と想定すれば、月間売上原価は50万円となり売上総利益は200万円です。人件費を20万円×5人と想定し、家賃20万円で減価償却費を5万円、光熱費や広告費など細かい費用を合わせて諸経費を180万円と予測したとします。そうすると、売上総利益200万円から諸経費180万円を差し引いて、予測した月間営業利益は20万円です。これに減価償却費5万円を足して、最終的に返済可能な金額は25万円となります。問題は、オーナーの手元にもお金を残さないと生活ができないため、必ず実際の借入金返済額は返済可能額より下回るようにしましょう。もし借入金を400万円とするなら、5年で返済するものとして月々の借入金返済額は約7万円となります。オーナーの手元に残る額は、25万円から7万円を差し引いた18万円です。このように損益計画を具体的かつ綿密に立てて、融資の希望額と資金の使途に強い具体性を持たせることが大切になります。

 

◆資金繰り表を作成することで客観性を保つ

 

事業計画書の一角である資金繰り表は、日本政策金融公庫での面談を受ける上で必要なことはもちろん、経営者がキャッシュフローを考える上でも重要となる書類です。損益計画表を入念に立てて帳簿上では儲かったとしても、支払いに回す賃金が不足して黒字倒産という悲劇を招きかねません。売上があがっても回収条件が長期にわたるケースや、借入金の返済など帳簿上には計上されない現金支出などが主な原因となります。現金売上や売掛金を含む前月繰越金などの収入合計、仕入れや人件費の支払いなどを含めた支出合計、借入金返済額といった項目の試算によるお金の流れとタイミングの把握が、資金繰り表作成のポイントです。支払いと入金のバランスをうまく保つことにより、黒字倒産を未然に予防でき安定した経営を行うことができるでしょう。もちろん融資を受ける際においても日本政策金融公庫に対して、確かな返済能力を示す根拠資料となり得ます。

 

◆しっかりと計画書を整えておけば落ち着いて申込ができる

 

創業計画書や事業概況を含む事業計画書の作成は、日本政策金融公庫から融資を受ける上で大切な説得材料となるばかりでなく、開業後の事業を安定して継続していく上でも重要なものとなります。しっかりと時間をかけて入念に計画すれば、確実に融資も安定した事業経営も得られることでしょう。

 

◆参考URL

【1段落】https://sogyotecho.jp/motive-of-start-up/

【2段落】https://jfc-guide.com/financing-guide/109/

【3段落】https://tenpo.casio.jp/column/detail082.html

http://www.columbus-egg.co.jp/knowhow/open09_01.php

【4段落】https://www.sawabe-tax.com/support/s-17.html

【5段落】https://sogyotecho.jp/cashmanagement-sheet/

https://www.sawabe-tax.com/support/s-34.html

【6段落】なし

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